アレルギー科とは
アレルギー科は、免疫系の過剰反応によって引き起こされるさまざまなアレルギー疾患を専門的に診療する科です。人間の体には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守る「免疫」という仕組みが備わっていますが、この免疫が本来無害であるはずの花粉・食物・ダニ・薬剤などに対して過剰に反応してしまうことがあります。この過剰反応がアレルギー反応であり、くしゃみ、鼻水、皮膚のかゆみ、呼吸困難など多様な症状を引き起こします。
アレルギー科では、血液検査や皮膚テストなどの専門的な検査を通じてアレルゲン(アレルギーの原因物質)を特定し、患者さん一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた治療計画を立てます。内科や耳鼻咽喉科、皮膚科などでもアレルギー疾患の治療は行われますが、アレルギー科は複数の臓器にまたがるアレルギー症状を総合的に診ることができる点が大きな特徴です。たとえば、花粉症と喘息と食物アレルギーを同時に抱えている患者さんの場合、アレルギー科であれば一つの科で包括的な管理が可能です。
近年、日本ではアレルギー疾患を持つ方が増加傾向にあり、国民の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患を抱えているとされています。アレルギー科は、こうした現代社会において重要性が増している診療科の一つです。
アレルギー科が対応する主な症状・疾患
アレルギー科では、免疫系の異常反応に関連する幅広い症状・疾患を取り扱います。以下に代表的なものを挙げます。
- 花粉症(季節性アレルギー性鼻炎):スギ・ヒノキ・ブタクサなどの花粉が原因で、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどの症状が出現します。日本では国民の約4割が罹患しているとされる代表的なアレルギー疾患です。
- 通年性アレルギー性鼻炎:ダニ・ハウスダスト・カビ・ペットの毛などが原因で、季節を問わず鼻症状が持続します。花粉症と合併することも多く見られます。
- 気管支喘息:アレルゲンの吸入や気道の慢性的な炎症により、咳・喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)・息切れ・胸の圧迫感が発作的に生じます。適切な長期管理が重要です。
- アトピー性皮膚炎:遺伝的な素因と環境要因が複合的に関与し、慢性的な皮膚の炎症・かゆみ・乾燥を引き起こします。乳幼児期に発症することが多いですが、成人で初めて発症するケースもあります。
- 食物アレルギー:卵・牛乳・小麦・そば・ピーナッツ・甲殻類などの特定の食物を摂取した際に、蕁麻疹・嘔吐・下痢・呼吸困難などの症状が出ます。重症例ではアナフィラキシーに至ることもあります。
- 薬物アレルギー:抗生物質・解熱鎮痛薬・造影剤などの薬剤に対して免疫系が過剰反応し、発疹・発熱・臓器障害などを引き起こします。過去に問題なく使用できた薬でも突然発症することがあります。
- 蕁麻疹:皮膚に突然、赤みを伴う膨疹(ぼうしん)が出現し、強いかゆみを伴います。アレルギー性のものと非アレルギー性のものがあり、原因の特定が重要です。
- アレルギー性結膜炎:花粉やダニなどのアレルゲンが目の結膜に触れることで、目のかゆみ・充血・涙目・異物感などが生じます。花粉症に伴って発症することが多い疾患です。
- アナフィラキシー:食物・薬物・蜂毒などが原因で、全身に急速かつ重篤なアレルギー反応が起こる状態です。血圧低下・意識障害・呼吸困難を伴い、緊急の対応が必要です。
- 接触性皮膚炎(かぶれ):金属・化粧品・ゴム製品・植物などが皮膚に接触することで、接触部位に湿疹・かゆみ・水疱などが生じます。原因物質の特定と回避が治療の基本です。
- ラテックスアレルギー:天然ゴム(ラテックス)に含まれるタンパク質に対するアレルギーで、ゴム手袋やゴム風船などに触れると蕁麻疹や呼吸困難が起こることがあります。医療従事者に多い傾向があります。
- 口腔アレルギー症候群:花粉症の方が特定の果物や野菜を食べた際に、口の中やのどのかゆみ・腫れが生じる症状です。花粉と食物のタンパク質構造が似ていることが原因です。
- 好酸球性食道炎・胃腸炎:アレルギー反応により好酸球という白血球が消化管に蓄積し、食道や胃腸に慢性的な炎症を引き起こす疾患です。食べ物のつかえ感や腹痛の原因となることがあります。
- 職業性アレルギー:職場で曝露される化学物質・粉塵・動物のフケなどが原因で発症するアレルギーです。パン職人の小麦粉喘息、美容師の手荒れなどが代表例です。
- 昆虫アレルギー(蜂毒アレルギーなど):蜂に刺された際に局所の腫れだけでなく、全身性の蕁麻疹・呼吸困難・血圧低下などが起こることがあります。過去に蜂に刺されてアレルギー反応が出た方は特に注意が必要です。
- 金属アレルギー:ニッケル・コバルト・クロムなどの金属に対する遅延型アレルギーで、アクセサリーや歯科金属が原因となり、接触部位やそれ以外の部位にも湿疹が生じることがあります。
受診すべきタイミングの目安
※以下はあくまで目安です。症状の重さや組み合わせにより緊急度は異なります。不安を感じたら早めに医療機関を受診してください。
以下のような症状や状況がある場合は、アレルギー科への受診を検討してください。
- くしゃみ・鼻水・鼻づまりが2週間以上続き、風邪薬では改善しない場合
- 毎年特定の季節になると決まって鼻や目の症状が出る場合
- 皮膚のかゆみや湿疹が繰り返し起こり、市販の塗り薬では治まらない場合
- 特定の食べ物を食べた後に、蕁麻疹・嘔吐・口のかゆみなどの症状が出た場合
- 薬を服用した後に発疹・発熱・体調不良などが生じた経験がある場合
- 咳が長期間続き、特に夜間や早朝に悪化する傾向がある場合
- 原因不明の蕁麻疹が繰り返し出現する場合
- 蜂に刺された後に広範囲の腫れや全身症状が出たことがある場合
- 過去にアナフィラキシーを経験し、再発予防について相談したい場合
- お子さんが食物アレルギーの疑いがあり、除去食の指導を受けたい場合
特に、呼吸困難・顔面や喉の腫れ・意識がもうろうとするなどの症状が急速に進行した場合は、アナフィラキシーの可能性があるため、ためらわず救急車を呼んでください。アナフィラキシーは命に関わる緊急事態です。
受診・診療の流れ
アレルギー科を受診した際の一般的な診療の流れをご紹介します。
1. 問診
まず、現在の症状の内容・発症時期・頻度・持続時間について詳しく聞き取ります。症状が出る場面や環境(自宅・職場・屋外など)、食事との関連、既往歴(過去のアレルギー歴)、家族のアレルギー歴、現在服用中の薬についても確認します。問診票に記入する形で進めることが多いです。
2. 検査
問診の内容をもとに、アレルゲンを特定するための検査を行います。血液検査(特異的IgE抗体検査)では一度の採血で数十種類のアレルゲンに対する反応を調べることができます。皮膚プリックテストでは、少量のアレルゲンエキスを皮膚に接触させて反応を見ます。食物アレルギーが疑われる場合は、経口負荷試験(医師の監視下で少量ずつ食物を摂取する検査)を行うこともあります。必要に応じて、呼吸機能検査や画像検査も実施されます。
3. 診断と治療方針の決定
検査結果と症状を総合的に評価し、アレルギー疾患の種類と重症度を診断します。治療方針は、アレルゲンの回避指導・薬物療法(抗ヒスタミン薬・ステロイド薬・ロイコトリエン拮抗薬など)・免疫療法(アレルゲン免疫療法)のいずれか、または組み合わせで決定されます。
4. 治療の実施と経過観察
処方された薬の効果や副作用を確認しながら、定期的に通院して症状の経過を観察します。症状のコントロール状況に応じて、薬の種類や量を調整していきます。舌下免疫療法を行う場合は、3〜5年の継続治療が推奨されます。
アレルギー科で使われる主な検査・治療法
アレルギー科では、症状や疑われる疾患に応じてさまざまな検査・治療法が用いられます。
検査法
- 血液検査(特異的IgE抗体検査):採血により、各種アレルゲンに対するIgE抗体の量を測定します。一度に39項目を調べられるMAST法や、主要なアレルゲンを網羅するView39などが広く使用されています。
- 皮膚プリックテスト:前腕の皮膚にアレルゲンエキスを滴下し、小さな針で軽く刺して15〜20分後の反応(膨疹の大きさ)を判定します。即時型アレルギーの診断に有用です。
- パッチテスト:背中の皮膚に各種アレルゲンを貼付し、48時間後・72時間後に反応を判定します。金属アレルギーや接触性皮膚炎の原因物質の特定に用いられます。
- 食物経口負荷試験:医療機関の管理下で、少量の食物を段階的に摂取し、アレルギー症状が出るかどうかを確認する検査です。食物アレルギーの確定診断や、除去食の解除判定に重要です。
- 呼吸機能検査(スパイロメトリー):肺活量や一秒量を測定し、気管支喘息の診断や重症度の評価に用います。気管支拡張薬を吸入した前後で測定することもあります。
- 呼気NO検査:呼気中の一酸化窒素濃度を測定し、気道のアレルギー性炎症の程度を評価します。喘息のモニタリングに有用な非侵襲的検査です。
治療法
- 薬物療法:抗ヒスタミン薬(くしゃみ・鼻水・かゆみの抑制)、ステロイド薬(内服・外用・吸入・点鼻、炎症の抑制)、ロイコトリエン拮抗薬(鼻づまり・気管支収縮の改善)、気管支拡張薬(喘息発作の緩和)、生物学的製剤(重症喘息・アトピー性皮膚炎に対する抗体医薬)などが症状に応じて使い分けられます。
- アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法・皮下免疫療法):アレルゲンを少量ずつ体内に投与し、免疫の過剰反応を徐々に抑える根本的な治療法です。スギ花粉症やダニアレルギーに対する舌下免疫療法は自宅で毎日実施でき、3〜5年の継続で長期的な効果が期待できます。
- エピペン(アドレナリン自己注射器)の処方:アナフィラキシーのリスクがある方に対して、緊急時に自分で注射できるエピペンを処方し、使用方法の指導を行います。
- 環境整備・生活指導:アレルゲンの回避方法(寝具の管理、空気清浄機の使用、食品表示の確認方法など)や、スキンケアの指導、食事指導を行います。
アレルギー科の選び方・ポイント
アレルギー科を受診する際に、医療機関を選ぶポイントをご紹介します。
- アレルギー専門医の在籍:日本アレルギー学会が認定する「アレルギー専門医」が在籍している医療機関は、専門性の高い診療が期待できます。学会のウェブサイトで専門医を検索できます。
- 検査設備の充実度:血液検査だけでなく、皮膚テスト・呼吸機能検査・食物経口負荷試験などの検査が実施できる医療機関であれば、より正確な診断が可能です。
- 舌下免疫療法の実施:根本的な治療であるアレルゲン免疫療法を実施している医療機関であれば、長期的な症状改善を目指した治療の選択肢が広がります。
- 複数のアレルギー疾患への対応:喘息・鼻炎・皮膚炎・食物アレルギーなど、複数のアレルギー疾患を総合的に診てもらえる体制があるかを確認しましょう。
- 小児アレルギーへの対応:お子さんの受診の場合は、小児アレルギーの経験が豊富な医師がいるか、小児向けの検査や治療に対応しているかを確認することが大切です。
- 通院のしやすさ:アレルギー疾患は長期にわたる管理が必要なケースが多いため、自宅や職場からの通いやすさも重要な選択基準です。
- 緊急時の対応体制:アナフィラキシーなどの緊急事態に備えて、救急対応が可能な医療機関や、近隣の救急病院との連携体制が整っているかも確認しておくと安心です。
- 丁寧な説明と生活指導:検査結果の説明、治療方針の提示、日常生活での注意点について丁寧に説明してくれる医療機関を選びましょう。アレルギー疾患は患者さん自身の理解と自己管理が治療効果に大きく影響します。
よくある質問(FAQ)
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Q. アレルギー科と耳鼻咽喉科・皮膚科、どちらを受診すべきですか?
A. 症状が鼻だけ・皮膚だけに限られている場合は、それぞれの専門科でも十分な治療が受けられます。しかし、鼻と皮膚と目など複数の部位に症状がある場合や、原因のアレルゲンを詳しく調べたい場合は、アレルギー科を受診すると総合的な診療が受けられます。
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Q. アレルギー検査は何歳から受けられますか?
A. 血液検査は基本的に乳児期からでも実施可能です。ただし、年齢が低いとIgE抗体が十分に産生されておらず、検査で陽性にならない場合もあります。皮膚テストも小さなお子さんに実施できますが、年齢や状態に応じて医師が最適な検査方法を判断します。
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Q. アレルギー検査で陽性だった食物は必ず除去すべきですか?
A. 血液検査が陽性であっても、実際にその食物を食べて症状が出るとは限りません。不必要な食物除去は栄養不足や生活の質の低下につながるため、食物経口負荷試験などで実際の症状の有無を確認した上で、医師と相談して除去の必要性を判断することが大切です。
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Q. 舌下免疫療法はどのくらいの期間かかりますか?
A. 一般的に3〜5年の継続治療が推奨されています。治療開始から数か月で効果を実感し始める方もいますが、十分な効果を得て治療終了後も長期間効果を維持するためには、最低3年以上の継続が重要です。毎日自宅で薬を舌の下に投与する治療のため、通院は月1回程度です。
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Q. アレルギーは完治するものですか?
A. アレルギー体質そのものを完全になくすことは現時点では困難ですが、適切な治療と管理により症状を大幅に抑えることは可能です。特にアレルゲン免疫療法は、体質自体を変えていく治療法として根本的な改善が期待できます。また、乳幼児の食物アレルギーは成長とともに自然に耐性がつき、食べられるようになるケースも多くあります。
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Q. 花粉症の治療はいつ頃から始めるのが効果的ですか?
A. 花粉が飛散し始める2週間ほど前から薬を飲み始める「初期療法」が効果的です。スギ花粉症であれば、1月下旬〜2月初旬頃から治療を開始することで、シーズン中の症状を軽減できます。舌下免疫療法の場合は、花粉の飛散していない時期(6月〜11月頃)から治療を開始します。
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Q. エピペンはどのような方に処方されますか?
A. 過去にアナフィラキシーを経験した方や、蜂毒・食物・薬物などに対して重篤なアレルギー反応を起こすリスクが高い方に処方されます。体重15kg以上の方であれば処方可能です。使い方の指導を受け、常に携帯しておくことが推奨されます。処方を受ける際に、緊急時の対応手順についても医師から説明を受けましょう。
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Q. 大人になってから突然アレルギーを発症することはありますか?
A. あります。アレルギーは子どもの病気というイメージがありますが、大人になってから花粉症やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどを初めて発症するケースは珍しくありません。環境の変化やストレス、免疫バランスの変動などが発症のきっかけになることがあります。過去に問題なく食べていた食品で突然アレルギー症状が出ることもあるため、気になる症状があれば早めに受診してください。
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Q. アレルギーの予防法はありますか?
A. アレルギー発症の予防については研究が進んでいます。乳児期のスキンケアによるアトピー性皮膚炎の予防や、早期の食物導入による食物アレルギーの予防が注目されています。生活環境では、ダニやカビの対策(寝具の洗濯、換気、掃除)、禁煙なども有効とされています。ただし、すべてのアレルギーを確実に予防できる方法はまだ確立されておらず、研究途上の分野です。
まとめ
アレルギー科は、花粉症・食物アレルギー・喘息・アトピー性皮膚炎など、免疫の過剰反応が引き起こすさまざまな疾患を専門的に診療する科です。正確なアレルゲンの特定と、薬物療法やアレルゲン免疫療法を組み合わせた適切な治療により、症状のコントロールと生活の質の向上を目指すことができます。繰り返すアレルギー症状でお悩みの方は、専門的な検査と治療を受けることで、症状の改善が期待できますので、お気軽にアレルギー科にご相談ください。